“よそ者”に侵されるエゾクロテンの生息環境(産経新聞)

 北海道・新得町のトムラウシ温泉。絶え間なく降り積もる雪で白銀の世界だ。斜面に小さな足跡が無数に温泉宿にむけて続いていた。その「けもの道」にカメラを設置、遠隔操作で姿を待った。

 雪の中から現れたのは、日本では北海道だけに生息するエゾクロテンだ。小さな足跡の主は愛くるしい表情でこちらを見ている。

 エゾクロテンは一時は毛皮を目的とした乱獲により絶滅寸前の危機にあった。当時の記録によると明治34年の捕獲数は約7500匹。それが19年後の大正9年には214匹までに激減。この年から禁猟となり環境省のレッドデータブックで準絶滅危惧(きぐ)種に分類されている。

 エゾクロテンの生態に詳しい斜里町立知床博物館学芸員の村上隆広さんは「知床では事故などで持ち込まれるエゾクロテンが増加しており、生息数は増加傾向にある」とみている。しかし、研究者も少なく生態も生息数もよく分かっていないのが現実だ。

 村上さんは今後、糞(ふん)からDNAを採取、個体識別を行い2〜3年後には知床での生息数を割り出す予定だ。懸念されるのは本州から持ち込まれたニホンテンの野生化。村上さんらの行った調査では、札幌南部から苫小牧にかけての平野部を境に、エゾクロテンとニホンテンの目撃情報が分かれている。

 ニホンテンの体重はエゾクロテンより約1・5倍と大きいが、生息環境は同じ。村上さんは「目撃情報が分かれる平野部をニホンテンが越えた場合、一気にエゾクロテンの生息環境が狭められ、絶滅する危険性もある」と警告する。(写真報道局 大山文兄)

【用語解説】生物多様性

 多様な生き物が存在し初めて人の生活は成り立っている。水や食料、薬の開発も自然の恩恵だ。しかし、人はここ数百年で種の絶滅スピードを1千倍に加速させた。絶滅危惧(きぐ)種を守り、生物多様性を保全することは、われわれの次世代が生きていくための環境を守ることにもつながっている。

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